病気と生活

癌のほうが怖いと言いながら糖尿病で亡くなった祖母

直接の死因は心不全ですが、亡くなってからもう10年経ちます。

祖母は50代半ばで糖尿病と診断されてから30年近く病気と付き合い、白内障の手術をしたり、足の神経障害で歩行困難になったり、最後の数年は寝たきりで過ごしました。口内炎、口腔炎は50代から出ており、口の中がいつも荒れ、潰瘍になってだんだん固形物が口から食べれなくなくなっていくのがとても痛々しかったです。

それでも祖母が亡くなった年代の女性の平均寿命とあまり変わりない寿命を全うしました。

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祖母の癌のイメージ

祖母がいつも言っていました。まだ「癌」じゃないだけましだ。と。

祖母の状態は、癌の私から見ても大変な苦労があったと思うのですが、祖母にとっては「癌」ひとくくりが、とてもとても恐ろしい病気のままでした。医療の進歩も知ろうとはしていませんでした。

祖母が元気な時代(私が物心ついた頃)は癌は治らないことがよくあった時代です。癌だと知らされずに強い副作用の抗がん剤を投与されたりするドラマのシーンなんかよくありました。

癌そのものの症状より、誇張された「抗がん剤の副作用」のシーンが「癌」を怖いものだと思わせていた時代だったと思います。

そして、祖母は身近で癌になった人を見ていないので癌の事をあまり知りません。私が癌にかかっていたことは祖母には内緒にしていました。

糖尿病の合併症のための入退院で大変な精神状態にあるのを案じ、祖母にとっては糖尿病より何倍も恐ろしい「癌」に孫の私がかかっていることは内緒にしたほうがいいと親族で話し合ったからです。

かかってもいない「癌」におびえる祖母に、「癌は治る時代」「共存も出来る時代」と誰かが言っても、高齢になるにつれ、なかなか耳を傾けることはありませんでした。

糖尿病と癌も疎遠のものであると信じたかったのだとも思います。

かたくなな祖母

きのこさんによるイラストACからのイラスト

それに、自分の状況は誰かと比べて「幸せだ」「マシだ」と思いたかった気持ちも分かります。「癌」より「糖尿病」の私のほうがよかったと。

肝臓がん告知せず

同じ病室の糖尿病の患者さんに「癌」が見つかった。という話を聞くと大変な恐怖で不安定になっていました。

癌がみつかったならどんなに高齢で弱っていても有無を言わさず大手術をされて強い抗がん剤を勝手にされてしまうと思い込んでいるようでした。今思えばこれが痴呆の始まりだったかもしれません。

それから何回か糖尿病で入退院を繰り返し、痴呆が進んだ頃「肝臓がん」があることがわかりました。長く糖尿病と付き合い、高齢ともなると、いろいろ調べている家族にとって、癌があることを特別驚くことはありません。

もう口から栄養も取れなくなっている80代の祖母に大手術をすることもありません。合併症の緩和が精いっぱいの状況で、抗がん剤をすることもありません。医師も、たまたま肝臓がんを見つけたけれど、「がん」そのものに対する積極的治療はしないが、見つかったことは家族に伝えなければならないからとおっしゃいました。

もちろん、祖母には告知していません。

これから80代を迎える方は、医療の進歩も知っていますし、ある程度携帯やスマホにも触れ、情報集めも出来る方だろうと思います。高齢者の方へどのように病気を告知し説明しているのでしょう。選択もさせてあげたいとも思うし、知らないまま気楽にいてほしいというケースもあるかもしれません。なにより、その時の年齢、状態などにより、十人十色なんだと思います。

私は、親不孝なことに、自分の病気のことで、自分の親の事はあまり考えていませんでした。考えないようにしていました。

しかし、ふと、あれ、私なんだかんだ言いながら、とりま元気よね?無再発生存18年しているし・・・

そして自分の親が年を取っていくのを感じるたびに、最近は祖母のことをよく思い出すのです。

                      

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